理由は定かではないのだが実は私には困った性癖がある。もともと物欲は人様があきれるほどに希薄なくせに、これだけはどうしても欲しいと思うものがあるのだ。意を決して告白すると、それは「好きになったオトコの時計を欲しがる」というものだ。だいたい男が時計をはずす場面はかなり親密になってから訪れるもので(こういう話を書くのは私にとってファンタジーなのであまり生々しくとらえないでいただきたい、というのは私の身勝手というもんかなあ)、初めてのデートから「ね、その時計ちょうだいな」などとはもちろん言わないし、言えない。でもなぜか私の視線のベクトルは彼の時計、そう彼の腕に四六時中まとわりついている時計に物欲しげに釘づけになってしまうのだ。時計ほど朝から晩まで誰かの肉体に密着している物体はなく、だからそれはかなりセクシーなものであると思っている。